plain jane|食べた人がちょっと元気になれる、ちょっと特別なお菓子を目指して。

plain jane|食べた人がちょっと元気になれる、ちょっと特別なお菓子を目指して。

大分県杵築市にお店を構える「plain jane(プレインジェーン)」は、大通りから少し入ったところにひっそりとたたずむ、小さな工房兼お店。週に2日だけの営業日には多くのお客様が訪ねてきます。

どこか懐かしいようなレトロな雰囲気の引き戸をそっと開けると、中からは焼き菓子の甘くて幸せな香りが漂います。隠れ家のような小さな空間の中、壁側の棚には手作りのスコーンやクッキーが並び、まるでお菓子に囲まれているような気分になります。

 

ちょっとだけ特別なお菓子。ロゴデザインに込められた想い。

お店に並ぶお菓子は全て、店主の衛藤直美さんの手作り。衛藤さんが作るのは「食べるとちょっと元気になる、ちょっとだけ特別な」お菓子。

「自分のためのご褒美に、一人でこっそり食べたくなるような。仕事でつかれたときに、食べると元気が出るような。自分の作るお菓子がそんな存在であると嬉しい。」と衛藤さんは語ります。

その気持ちはお店のロゴマークにも表現されています。

シンプルな白地に描かれているのはお菓子を後ろ手に持ったJaneちゃんという女の子。手にしたお菓子に心躍る気持ちを隠そうとしつつも、こちらから見えないその表情はきっと押さえきれずにニコニコ。そんな想像が膨らむようなデザインです。

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お菓子作りとは無縁だったこれまでの歩み。

数年前までは起業してお菓子のお店を構えることになるとは、衛藤さん自身が思ってもいませんでした。大学時代は理系の学部に所属。卒業後は製造業や土木系測量、建築系企画の進行サポート、企画商品化などなど、複数の職場で様々な仕事に携わってきました。それぞれの職場での経験についてお話を伺うと、その全てが今の衛藤さんのお菓子づくりの材料となっているように感じます。

衛藤さんが、自分の目指すべきものをブレずに、そして客観的に捉えられているのは、これまで携わってきた様々な仕事に真摯に取り組み、学び続けてきたからでしょう。

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きっかけは「自分にも何かできることはないのかな。」

衛藤さんのご両親はみかん農家。衛藤さんが幼いころは地域振興プロジェクト「一村一品運動」が盛んで、みかんをはじめとする農産物を手がける生産者たちには、活気がありいきいきとしていました。

しかし、原材料の高騰、異常気象、後継者不足など近年の生産者たちが置かれる状況は厳しく、昔からなじみの風景だった杵築のみかん畑の木が枯れているのを見かけるようになりました。

現状を目の当たりにし、衛藤さんは漠然と寂しいような、悲しいような気持ちになりました。「全部残せなくても、何かが残せれば・・・」「みかんやカボスの魅力を届けるにはどうしたらいいのだろう。」

家業を引き継ぐことは、現実的ではないと思いながらも、自分にも何かできることはないだろうかと考えました。

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発信することに軸に置き、自分にできることをやってみよう。

「自分にできるのは発信することかもしれない。」

思いついたのは、柑橘を用いたジャムやお菓子を作って販売し、柑橘の魅力を知ってもらったり、来てもらうきっかけを発信するということでした。

当時、衛藤さんは企業に勤めていましたが、ジャムやお菓子作りに取り組みたいと考えたのです。

今までの経験で培ってきた、多角的な視点で考え、試行錯誤しながらお菓子作りに向き合いました。試作したものが美味しいと言ってもらえることは嬉しく、やる気にもつながりました。次第に本気で「これを自分の仕事にしたい」と考えるようになりました。

 

やると決めたら一直線!

「まずは自分の実力を試してみよう。」と考えた衛藤さんは、思い立って愛媛県八幡浜市で開催された「ダルメイン世界マーマレードアワード&フェスティバル」の日本大会に出品することにしました。

やると決めたら一直線。「家族が寝静まったあと、一人で台所で柑橘類を刻んで、鍋で煮て。寝不足になりながら作りました。」

2021年度アマチュア部門に出展し、初めての出展でありながら2部門で見事銀賞を受賞したのです。

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広がる縁と、育っていく向上心。

自信を手にした衛藤さんは、活動の場所を広げていきます。マルシェや地域のイベントなどに今まで以上に積極的に出展。地域のイベントに参加すると、そこから縁が広がり、そこで知り合った方のお店や展示会会場でお菓子を置かせてもらえるようになりました。

様々なジャンルの作り手さんたちにアドバイスや刺激をもらいながら、思うままお菓子を作るだけでなく、お菓子をどんな人に届けたいか、作りたい商品に向けてどのような準備をしたら良いか、どんな材料が適切か、経営可能かつ購入しやすい価格帯か、試行錯誤を繰り返しました。

 

 

食材を選ぶ基準は、作りたい味を表現できるかどうか。

「味見は友人だったり、お仕事でご縁ができた方だったり。何が良くて、何が悪かったか、頂いた意見は否定的なことでも一度持ち帰って考えるようにしています。」と衛藤さんは言います。

目指す味を実現するためには、お菓子の表情に合わせて食材を変えることにためらいはありません。「地元産のカボスを使うことは、柑橘の魅力を伝えるために必要なことなので変えないですが、それ以外の素材を変えることは、必要ならどんどん試してみます。」

自分の作りたい味が表現できるかどうか、食べた人に趣旨を共感してもらえるかどうかを何よりも大切にしています。

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受け止めてくれる大切な家族の存在があるから、一人で挑戦できる。

「ご家族には味見をしてもらったりしないのですか?」とたずねると、衛藤さんは「子供達は自分の好きなお菓子を食べるだけで、味の参考にならないんですよ。毎日でも手が伸び続けるってことは、美味しいとは思ってくれていはいるんでしょうけど」と笑って話します。

「夫は仕事を持っているし、両親は農業で忙しい。基本的にはお店のことは私一人でやっています。」と言いながらも、ご家族について語る表情はとっても柔らか。直接手伝ってもらうことはなくても、ご家族の存在がきっと衛藤さんの源になっているのでしょう。

「自分で決めて、自分の名義で事業計画を作り、様々な準備をしたからこそ、がんばらなくちゃ!と思えます。」そう語る衛藤さんの目には、一人の作り手としての強い意志が宿っていました。

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お店がオープンした今も、毎日がトライ&エラーの繰り返し。

お菓子を買ってくれた方々に「こないだのスコーンおいしかったよ」「また買いに来たよ」と言ってもらえることが増え、それがまた自信に繋がりました。そしていつしか自分のお店を構えたい思うようになりました。

決意を固めてから約1年後、20236月にその想いは実現しました。オープンしたお店には、地元地域の方々は勿論、イベントで購入した際の美味しさが忘れられず、大分県下から多くのお客様がやってきます。

「まだまだわからないことだらけで、日々勉強なんです。やってみては、ああでもないこうでもないと、トライ&エラーを繰り返しながらですね。」と語りながらも衛藤さんの表情は本当に楽しそうです。

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やっぱりジャムにチャレンジしたい。杵築の魅力が伝えられるジャムを。

衛藤さんは新商品の開発にも熱心です。今回のTOKIWAプリーマの企画にも「まずはやってみよう。」と思いチャレンジしてくれました。

今後チャレンジしたいことを衛藤さんに尋ねたところ、ジャムの製造販売にチャレンジしたいとのこと。「砂糖を入れて煮詰めるだけなのに美味しさに差が出るのが面白いですよね。地域の為に自分に何ができるか考えた時、ジャムがいいんじゃないかと。商品として販売するには、お菓子以上に難しいことも沢山あるんですけど、食べた人の10人に1人でも、柑橘の良さに気づいてもらえるきっかけになればと思うんです。」

衛藤さんのチャレンジはこれからもまだまだ続きそうです。

 

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